ゴム (gom)は、元来は植物体を傷つけるなどして得られる無定形かつ軟質の高分子物質のことである。だが現在では、天然ゴムや合成ゴムのような有機高分子を主成分とする一連の弾性材料すなわち弾性ゴムを指すことが多い。これらの材料はある温度範囲で、ゴム弾性を持つゴム状態となる。エラストマー(有機材料の中で、引っ張ると伸び離すと原型に戻るゴム弾性をもつもの)の一種であり、エラストマーはゴムと熱可塑性エラストマーの二つに分けられる。ゴムはゴムの樹の樹液(ラテックス)を原料として作られる「天然ゴム」と石油を原料に人工的に合成される「合成」ゴムがある。可塑性エラストマーは常温ではゴム弾性があるが、高温ではプラスチックのようにやわらかくなるので成形加工が容易である。また高温で軟化するためゴムにはできないリサイクルが可能である。
アルコールには不溶だが、水を含ませると著しく膨潤してゲル状になり、種類によってはさらに水を加えると粘質のコロイド溶液となる植物由来の物質を指しており、主として多糖類から構成されている。逆に、水には不溶だがアルコールには溶ける植物由来の無定形の樹脂はレジン(resin) と呼ばれる。こうしたゴムの代表がアラビアゴムであり、また似たものにトラガカントゴムやグアーガムがある。近代の発酵工業によって新たに登場した類似物質として、キサンタンガムが知られる。これらは食品の粘度を調整したり(増粘多糖類)、接着剤、あるいは水彩絵具の基質として用いられてきた。これらは弾性ゴムが一般的となってからは水溶性ゴムと呼ばれている。 16世紀になってヨーロッパ人が中南米の文化や自然産物と接触するようになってから、彼らが古くから知っていたゴム(ガム)に似ているが、それらにはない新しい性質を持った植物由来の物質がヨーロッパ社会に知られるようになり、また導入され、古くから知られていたゴム(ガム)と同じ範疇の物質としてゴム(ガム)と呼ばれた。これらは植物体に含まれる乳液(ラテックス)を採取し、凝固させることによって得られるものであった。その中のひとつはチクルの幹から得られ、人間の体温程度の温度で軟化するもので、噛む嗜好品として用いられていた。このゴム(ガム)に関しては、チューインガムを参照されたい。 もうひとつ、パラゴムノキの幹から採取されるラテックスを凝固させたものは著しい弾性を持ち、後世ヨーロッパで産業用の新素材として近代工業に欠かせない素材として受容され、発展することとなった。そのため、パラゴムノキ以外の植物からの同様の性質のゴムが探索され、また同様の性質を持つ高分子化合物の化学合成も模索されることとなった。この一群のゴムを弾性ゴムと呼び、イギリスの科学者ジョゼフ・プリーストリーが鉛筆の字をこすって(英: rub) 消すのに適することを報告したこと(消しゴムの発祥)から、英語ではこするものを意味するラバー (rubber) とも呼ばれることとなった。 さらに天然のゴム類似物質としてガタパーチャ(グッタペルカ)がある。
ゴムは弱い力でもよく伸び、5から10倍にまで変形する。しかし外力を除くとただちに元の大きさまで戻る。伸びきった状態では非常に大きな応力を示す。 弾性率は絶対温度に比例する。 急激(断熱的)に伸長すると温度が上昇し、その逆に圧縮すると温度が降下する(Gough-Joule効果)。 変形に際し、体積変化がきわめて少ない。 ゴムの弾性は、本来規則構造を持たない分子の配列が、外部からの力により規則的になり、これが元の不規則な配列に戻ろうとするときの力によるものである。
ゴム植物が分泌した乳液(ラテックス)を原料に加硫したもの。(※加硫/1839年にグットイヤーが発見。生ゴムに加硫剤(硫黄など)を加えて加熱することで弾力のある性質になる化学変化を起こす。)耐油性、耐候性、耐熱性に問題がある。
石油を蒸留してできるナフサを原料とする。
天然ゴムを化学的に製造したもの。高強度、耐摩性、耐寒性があるが耐候性、耐油性、耐薬品性、耐熱性に劣る。<用途/大型自動車のタイヤ、履物、ホース、ベルト、輪ゴム、靴底>
天然ゴムの代用として開発。低価格。耐候性、耐熱性、耐摩擦性、耐弾性に優れ耐油性も若干良好である。耐寒性や引裂の強度で劣る。<用途/自動車タイヤ、履物、運動用具、防振ゴム>
ポリエステルウレタンゴムとポリエーテルウレタンゴムがある。機械性強度、耐摩擦性、耐引裂性に優れる。耐熱、耐水、耐湿性にやや劣る。大きな力がかかるものに使われる。<用途/工業用ローラー、ソリッドタイヤ、ベルト、高圧パッキン、ゴム足>
耐候性、耐オゾン性、耐熱性、極性液体に対する抵抗性、電気的性質に優れる。<用途/電線被覆、窓枠ゴム、コンベアベルト>
ゴムの中で最も耐熱性と耐薬品性をもつ。耐候性、耐オゾン性にも優れる。油と対極をなす、高温蒸気、アルコール、アルカリなどの溶液には耐性が劣る。<用途/自動車燃料ホース、シール>
高度の耐熱性、耐寒性、耐候性、耐オゾン性をもつ。電気特性、非粘着性に優れ、人体にも優しくた耐薬品性に優れる。透明性がある。<用途/自動車関連部品、医療関連機器、食品関連機器>
ゴムとプラスチックの中間の特性をもつ。ゴムのように熱硬化性がないので加硫が必要ない。熱可塑性のため一般的な樹脂加工と同じ機械で成形が可能である。ゴムに比べて高速で成形可能。他の樹脂との熱融着が可能。
比較的安価。使用可能硬度が広範囲。やわらかく、伸びやすい。<用途/靴底、自動車部品、食品容器、スポーツ用品>
比重が軽い。ポリエステル系の次に耐熱性がある。耐候性、耐オゾン性に優れる。<用途/自動車部品、建築・土木部品、家電部品、包装フィルム、工業用部品>
耐候性、耐オゾン性、熱老化性、耐薬品性に優れる。弾力性、高温時の形状保持性、圧縮永久ひずみに欠点がある。<用途/電線被覆、自動車部品>
強度、耐摩擦性、耐屈折性に優れる。耐熱性に欠点あり。<靴底、スポーツ用品、自動車内装部品>
機械的な強度、耐熱性、耐久性、成形性に優れる。<用途/ホース、チューブ、自動車部品、電気部品>
ナイロン樹脂の特性をもつ。強靱性、耐薬品性、耐摩擦性に優れる。ゴム弾性に乏しい。価格が高い。<用途/人工芝>
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